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津地方裁判所 昭和52年(わ)60号 判決 1977年5月20日

本籍

三重県伊勢市磯町一、〇二三番地の二

住居

三重県伊勢市曽禰一丁目七番二一号

医師

田中式部

大正一四年二月一八日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官鶴田六郎出席のうえ審理を遂げ、つぎのとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月および罰金一、五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は昭和三四年一月ころから、父繁蔵のあとを継いで三重県伊勢市曽禰一丁目七番二一号において、外科診療を主とする田中病院を経営しているものであるが、不正にその所得税を免れようと企て、

第一  昭和四八年一月一日から同年一二月三一日までの総所得金額は七五、七〇四、九九二円であり、これに対する所得税額は三八、三八二、二〇〇円であるのにかかわらず、公表計理上架空仕入を計上するなどの不正行為によつてその所得の一部を秘匿したうえ、昭和四九年三月一日、同市岩淵一丁目二番二四号所在の伊勢税務署において、同税務署長に対し昭和四八年度における被告人の総所得金額が三七、〇九一、七六六円でこれに対する所得税額が一三〇〇一、四〇〇円である旨虚偽の記載をした所得税確定申告書を提出し、その差額である二五、三八〇八〇〇円の所得税を免れ、

第二  昭和四九年一月一日から同年一二月三一日までの総所得金額は一二〇、九三五、八三九円であり、これに対する所得税額は六七、七一五、九〇〇円であるのにかかわらず、第一記載と同様の不正行為によつてその所得の一部を秘匿したうえ、昭和五〇年三月一四日前記伊勢税務署において、同税務署長に対し、昭和四九年度における被告人の総所得金額が五二、一二四、九二六円でこれに対する所得税額が一八、三七六、三〇〇円である旨虚偽の記載をした所得税確定申告書を提出し、その差額である四九、三三九、六〇〇円の所得税を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  被告人作成の上申書(二通「買掛金および架空仕入金額について」、「未払費用および架空経費金額について」と題するもの)(各添付の各表共)

一  田中克子の検察官に対する供述調書

一  田中克子の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  山本和子、寺田府子、浜井邦夫の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の告発書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料並びに脱税額計算書(二通)

一  宮崎税務署長作成の証明書四通(各添付の被告人作成の四八年分及び四九年分の各所得税の確定申告書写並びに各所得税青色申告決算書写に関するもの)

一  大蔵事務官作成の調査報告書(「四八年分期首売掛金、四八年分期末売掛金、四九年分期末売掛金、四八年分売上金額および四九年分売上金額について」と題するもの)

一  永野道夫作成の昭和五一年二月四日付上申書(添付書類写共)

一  永野道夫作成の昭和五一年一月二七日付証明書(添付各書類写共)

一  押収してある窓口日計表綴(昭和四八年一月一日から同年一二月三一日まで)一綴(昭和五二年押第二七号の一一)、同(昭和四九年一月一日から同年一二月三一日まで)一綴(同号の一二)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条に該当するので、それぞれ所定刑の懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期および罰金額の範囲内で被告人を懲役一〇月および罰金一、五〇〇万円に処し、同法一八条により被告人において右罰金を完納することができないときは金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 桜林三郎)

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